オーストラリアの障害年金事情

The Guardian4月22日に掲載された、ロイス・クルメロフス氏の記事、「双極性障がいで障がい年金を15年以上受給しているアメジスト・デウィルド氏の回想」から、豪(オーストラリア)の厳しい現実を垣間見た。

                                                                                            (The Guardianのポータルサイトから)

アメジスト・デウィルド氏は、公的部門に勤務し多忙な日々を送っていたが、職場でメンタル不調者を支えたことを契機に、自らも精神障がいを発病し16年前に職を辞した。

現在、豪では5人に1人がなんらかの障がいを持ちながら暮らしている。

メジスト・デウィルド氏は障がい年金受給中の75万人中の一人だ。障がい年金受給権者の約34%(257,828人)は、精神障がい者である。

豪では2012年以来、障がい年金受給者の適格基準はますます複雑になり、申請が抑制されている。

過去10年の間に、受給のためのハードルもますます高くなった。アメジスト・デウィルド氏が障がい年金を申請した当時(2002年)は、申請者の63%が認定されていたものの、2017年には43%に低下している。昨年はさらに下がり30%であった。

障がい年金の審査に落ちた人たちは、次のセーフティネットとして「Newstart」という失業手当に頼ることになる。働く能力を一部有しているとして、職が見つかるまでの給付である。

アメジスト・デウィルド氏によれば、障がい年金受給権者は楽に暮らしていけると思われているが、貯金をする能力がないためカビを取り除いた食品を食べて凌いだり、老眼鏡を買う余裕がなかったり、不測の出費が発生し、もがいたりした。

もっとも辛かったのは、愛犬モジョの耳が感染し膿んだ時だった。獣医に連れていくと、治療費に1500ドル(約11万5千円)かかると言われ、ショックで危うく気絶しそうになった。

モジョにとって耳の痛みは、耐え難いものであることを告げられた。私がモジョを助けてあげられないのは、とても不公平なことだと思った。叔父に頼みこんで、なんとかモジョを救うことができたが、他の受給権者に同じことが起きたときに、はたして手を差し伸べてくれる叔父はいるだろうか?

アメジスト・デウィルド氏は現在、年金の安定収入(週A$331.20)があることと、公営住宅に住んでいること(現在、公営住宅はない)にたいへん感謝している。

かつては、あたり前だと思っていた障がい年金受給権者の境遇が、今では贅沢になっている。

(The Guardian)

https://www.theguardian.com/australia-news/2019/apr/23/living-on-the-disability-pension-its-like-the-slow-dimming-of-the-light

我が国の障害年金との比較

豪においては、社会保障制度が社会保険方式ではなく、一般財源で賄われている。

障害年金については、疾病の状況だけでなく所得及び資産調査に基づいて給付される。

一方で、我が国における障害年金(二十歳前障害を除く)は、社会保険制度で成り立っている。拠出を行うことで、給付を受けることができる。

障害基礎年金1級の年金が975,125円、2級が780,100円である。初診日に厚生年金に加入していた場合は、報酬比例部分(被保険者期間が、300月未満の場合は300月とみなして計算)が加算され、より軽度の障害を対象とした3級もある。

障害年金3大要件とは、 ①初診日が確定すること、②初診日に年金制度に加入し、保険料を滞納せずに納めていたこと、③年金が受給できる障害の程度であることである。これら3大要件を満たすことは決して容易ではない。

日本における障害年金受給権者は197万9千人(平成27年厚生労働省年金局調査)で、そのうち精神障害者が約85万人(約43%)を占める。精神障害者85万人の内、知的障害にかかる者が約39万人である。

先行きの厳しいご時世を反映し、年々精神障害の比率が高まっているという特徴がある。

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