GPIFの年金運用 AI積極活用へ

公的年金は「所得代替率」を目安に運用が定められています。

所得代替率とは老齢年金の受給を開始する時点(65歳)における年金額が、現役世代の平均手取り収入額(ボーナス込み)と比較してどのくらいの割合かを示すものです。

厚生労働省の財政検証レポート(2019年)には、分母を現役男子の平均手取り収入額(ボーナス込み)とし、分子を現役男子の平均的な賃金で40年間働いた者の報酬比例部分の年金に夫婦の老齢基礎年金を加算した年金額と記してあります。

ちなみに、2019年においては、分母の現役男子の平均手取り収入額は357,000円で、分子の65歳時点の年金額は220,000円(報酬比例部分90,000円/月、夫婦の老齢基礎年金が130,000円/月)でした。

この計算式(220,000円÷357,000円×100)においては、妻は専業主婦かパートタイマーとして国民年金のみに加入した世帯がモデルに使われており、共働きが増えていく今後の指標としては通用しそうにありません。

2014年度における所得代替率は62.7%、2019年の所得代替率61.6%、2024年の所得代替率60.0~60.9%、2043年50.0%と漸減していきます。少子高齢化が進み年金制度を支える現役世代が減っていく中で、将来の年金は給付額が次第に減り、支給開始年齢が遅くなる可能性さえあります。

GPIFが株式偏重の運用を開始

給与所得者の通勤手当込み賃金の9.15%(事業主が2分の1を負担しているため実質保険料は18.3%)が厚生年金保険料として給与から控除されているわけですが、その大切な保険料を預かって運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)において、安倍政権の下で大きな運用改革が行われました。

運用改革によって2014年10月31日から年金運用資金の構成割合を国内債券35%(53%)、国内株式25%(17%)、外国債券15%(11%)、外国株式25%(15%)に変更(カッコ内は2014年10月以前の運用構成比率)しました。

そのため、株式市場に突如として出現したGPIF資金はクジラと呼ばれ、株式市場を支える中心的な役割を担うようになったのです。

(GPIFホームページから)

2018年3月末日時点で、国内株式の保有総額は40兆円を超え、同時点の上場企業(一二部・マザーズ・JASDAQ)の時価総額が665兆円ですから6%強をGPIFが保有していたことになります(現在も上場企業の時価総額、GPIFの保有率に大きな変更はありません)。

資産管理を扱うBloomberg Opinionのコラムニストであるマーク・ギルバート氏が、1月31日、GPIFのファンド・マネージャーの行動分析等を担うソニーのAI活用について記事にしました。

資金運用管理にロボットがやってくる

日本のGPIF 1兆6000億ドル(約175兆円)の資産を監視するため人工知能を活用

ソニーが1999年に最初のパーソナルロボットとして、アイボ(犬)を販売し始めたのを覚えているだろうか。

GPIFの最高投資責任者である水野弘道理事兼最高投資責任者は、ソニーのコンピューターサイエンス研究所に、人工知能を使用してサイバーハウンド(コンピューター・ネットワークを活用した管理システム)を構築し、GPIFの1兆6000億ドルの資産を運用する外部のファンド・マネージャーを監督するよう依頼した。(中略)

スタイル・ドリフト(運用スタイルの変化)の事例を突きとめるためには、現在のポートフォリオの選択と、長期間にわたる過去の取引履歴を比較する必要がある。これには人間の監督者よりもコンピューターがはるかに優れているデータ処理が含まれる。

ソニーは「このシステムはうまく機能しているように見えるものよりも、悪い出来事に集中する人間の傾向を補うことができる」と述べ、報告の中で比較的業績の悪いファンドが最も注目を集めることは避けられない事実としている。

また、事前に合意された専門分野以外の取引で高収益をもたらすファンドは、将来的なトラブルを蓄積しているのかもしれない。想定範囲を逸脱して損失を出すまで人間の監督者は気付かないかもしれないが、AIプログラムはそれをスタイル・ドリフト(運用スタイルの変化)として検出することができる。

日本のGPIFは、いくぶん官僚的な構造であるなど特有の特徴がある。ソニーの研究者たちは、選ばれたファンド・マネージャーに対する要求を責務と呼び、既存の投資行動を精査し分析を自動化することで、小規模企業をファンドのアウトソーシング登録候補にすることが可能だ。

ところで「何十億ドルもの資産がどれほど効率的に投資されているか」を検証できるコードで書かれた仮想警備犬に愛着を感じないものは何だろうか?

それはAIの研究においてブラックボックス問題として知られる問題だ。仮想警備犬が低い唸り声を発したとき、吠えるきっかけとなるステップを人間の管理者が判別できないことなのだ。

ソニーが言うように、このシステムの潜在的ユーザーはニューラルネットワーク(神経回路網)内の操作をブラックボックスとして受け入れる必要がある。言い換えればシステムの入出力は明確だが、その間に何が起こるかは不透明のままだ。

GPIFのような透明性が求められる公益の受託機関には望ましくない。GPIFは世界最大の年金基金として、国内では「クジラ」として知られている。研究論文で表明されたソニーの願いは、コンピューター駆動増強により人口頭脳「クジラ」が、AIの支援なくして人間が見ることのできなかったものを見れるようになるということだ。

GPIFの最高投資責任者である水野氏は今月初め、オックスフォードのサイード・ビジネス・スクールで行われたセミナーで、同社が分析するアクティブな投資マネージャーのスタイルを開発し、模倣するプログラミングを作成し、基本的に投資プロセスをコンピューター化したいと述べている。ロボットが様々な分野で職を得ようとしている。

(www.bloomberg.com) https://www.bloomberg.com/opinion/articles/2020-01-31/japan-s-pension-fund-tests-sony-ai-to-oversee-investors

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