自然災害の猛威、沿岸生態系とともに移住

気候変動による近年の自然災害・洪水に対し、米国では「氾濫原の舗装、川の支流開設、湿地の排水」が被害を大きくしたという共通の見解があり、「川を川らしくふるまわせる」という新しい洪水管理の概念がこれからの主流になること。

そしてダムや防波堤のような人工構造物に頼るのではなく、堤防や土手を後退させる「セットバック」という手法が有効であろうという記事を前回(2019年7月11日http://urx.red/6VSr)紹介いたしました。 先月の凄まじい台風(19号ハギビス・21号)を経験し、「人工構造物によって自然災害を防ぐことには限界があること」をまざまざと見せつけられたばかりです。

今回紹介する以下記事は、海面上昇に伴う嵐対策として人工的な防護構造物を「天然資源や生態系に優しい防護設備」に置き換え、沿岸の生態系をできるだけ守るという視点です。

自然災害の猛威を幾度も味わうことで余裕がなくなり「人間だけが災害に遭わなければ良い」という考え方に陥ってしまいがちです。

そうではなく生態系にも大きな注意を払って、海岸線からより内陸への居住地移動を長期的に野生生物らと一緒に進めていく。さもないと沿岸生物は洪水による汚染水や塩水にまみれて死滅し、今の豊かな生態系を守ることができないのです。

「1世紀単位では海岸線からの移住まったなし」との内容です。海岸線近くの土地地権者が移住に伴って経済的損失を被らないための措置にも言及しています。

そういえば海浜の砂浜がどんどん狭くなり、50年前は海の家から海岸線まで200~500メートルもあった砂浜が侵食し、海辺から道路や防風林まで100~300メートルまで迫ってしまった砂浜を本州沿岸そこら中で見かけます。

環境保護庁、米国上院環境·公共事業委員会、ホワイトハウス環境問題評議会に勤務し、「A New Coast: Strategies for Responding to Devastating Storms and Rising Seas」の著者であるジェフ·ピーターソン氏が、環境問題(気候変動、絶滅危惧種、汚染等)のニュースサイトThe Revelatorに、11月6日、気候変動に伴う嵐等から沿岸生態系を守るステップを記しました。

嵐と海面水位上昇が沿岸生態系を脅かしている

私たちができることは? 今から100年後には、米国の海岸線は現在の外観とは大きく違ってくる。

今後数十年の内に、激しい嵐と上昇する海面による1~2発の大きな災害をくらって海岸、湿地および河口は失われるか、ひどく劣化する。

これら災害によって、地域社会はより内陸への移住・重要なインフラの移転を余儀なくされる。そして魚、野生生物、生態系にも大きな影響を与えることとなる。

我々はすでに、物事がいかに悪化していくかを垣間見ている。 2017年の3つの大きな嵐(ハリケーン・ハービー、イルマ、マリア)により、3,000人以上の死者と約2,750億ドル(訳29兆9,118億円)の損害が発生した。

このような大規模な嵐の長期的な生態系への影響は、定量化するのが困難だ(定量化はそれほど重要ではない)。海外線や砂丘の移動、河川への塩水の侵入、洪水によって汚染された生態系、生息地、カキ床、サンゴの損傷が含まれる。上昇する海面は内陸部への被害を着実に拡大した。

ところが国はこの困難な課題に驚くほど対応できていない。私の著書「新しい海岸: 嵐による破壊と海面上昇への対応戦略」で書いたように、沿岸の生態系とそれに依存するコミュニティを守るために今すぐ手を打つ必要がある。

損失の測定

海岸線と沿岸湿地をより良く保護するための最初のステップは、嵐と海面上昇によって直面するリスクを理解することだ。科学者は気候が温暖化するにつれて、沿岸の嵐がより激しくなり、氷河と氷床の融解が2100年までに世界の海面を4フィート(約122センチ)上げると予測している。

米国沿岸では地盤沈下や海洋力学により海面上昇が15〜25%高くなる可能性がある。 これは生態系にとって何を意味するのか、正確に知ることは難しい。(中略)

保護の強化 ではどうすればいいのでしょう?

幸いなことに、気候の温暖化に伴って、沿岸の生態系を保護するためのツールやプログラムは既にたくさんある。既存のプログラムをさらに強化拡張する必要があるものの、たとえば沿岸地域管理プログラムは、沿岸保護のための州計画をサポートしている。

重要な最初のステップは、既存の沿岸生態系の慎重なマッピングと、これらの資源の内陸への移動を成功させることです。このような地図が手元にあれば、政府や非営利組織は、時間の経過とともに沿岸生態系になる地域を特定できる。

魚と野生生物のマッピングと生態系サービスの評価に特別な注意を払う必要がある。そうすることによって生態系が地理的に変化する際に、利益または損失を追跡調査し、生態系の移動経路を保護することができる。

沿岸マッピングの取り組みは、内陸への移動計画に則っている。たとえば、国立魚類野生生物基金(National Fish and Wildlife Foundation)は、地域の保全計画を導くための「回復拠点」および、その他の情報を識別する地域沿岸回復力評価を開発した。南東部保護適応戦略には、保護と修復の場所を特定する青写真も含まれている。

人為的な脅威を減らすために、一部の州では防波堤や同様の強固な防護構造物の使用を制限している。一部の沿岸湿地の開発は、浄水法第404条に基づく許可プログラムにより制限されている。Nature Conservancyのような非営利団体は、地役権の取得や土地の購入を通じて資源の保護に取り組んでいる。

しかし、それだけではまだ十分ではない。 既存のエコシステムと、新しいエコシステムが移行する領域の両方を保護するには、計画への大規模な新規投資と、計画を実行するための大規模な新規資金が必要だ。

連邦政府機関は、沿岸生態系の長期的な内陸移動をうまく管理するために、州および地方政府、非営利組織と協力する必要がある。これには生態系を内陸に移動するためのスペースを見つけるための、難しい決定を下す計画プロセスを作成する必要がある。

州および地方自治体は、沿岸生態系の内陸移動の障害となる防波堤や沿岸防護構造物の代替案も検討する必要がある。

建物や重要インフラを高い位置に設置しなおすことで、沿岸の嵐からの洪水に対応できるか?

海岸線からより安全な地盤に移動することにより、海面上昇による恒久的な浸水は長期的にうまく管理されるか?

連邦政府は、州政府および地方政府がこれらの質問に対処するために必要な科学、政策ガイダンス、および資金を提供する必要がある。沿岸の生態系をより激しい嵐や海抜から守る努力は、コミュニティやインフラをこれらのリスクからより保護しようとするより大きな努力の中で行われると成功する可能性が高くなる。

たとえば、水害保険や災害救助に関する既存の連邦政府の方針を更新し、危険な沿岸地域に住み続けようとするインセンティブを減らさなくてはならない。そうすることによって生態系を害する構造的保護に対する将来需要が減少する。また水害や海面上昇のリスクを売却時に資産に開示することを求める新たな国策も、投資をリスクから遠ざけるのに役立つであろう。

最後に連邦政府は、洪水のリスクが高まり資産価値が下がる中で、沿岸の住宅所有者が壊滅的な財政的損失を回避するよう支援するべきだ。例えば政府は海面上昇を先取りして危険な資産を購入し、所有者は危険が迫るまで洪水保険料を払わずに家賃だけ支払うことができるようにする。

このようなプログラムによって、これらの住宅所有者はより安全な土地に移住し、広範な構造保護プロジェクトの機会を減らし、生態系やコミュニティの内陸移動の選択肢を拡大することができる。

100年後に健全な沿岸生態系が米国沿岸に残る可能性を高めるために、政府や非営利組織が既存の保護活動を強化し、脅威にさらされている資源を効果的に支援するために迅速に行動する必要がある。

(therevelator.org)

https://therevelator.org/new-coast-resilience/

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