IMF シュリンクノミクスで 日本は世界の実験場

IMF(国際通貨基金)のウェブサイトで、3月3日、経済学者ギー・ヒー・ホン氏とIMFアジア・パシフィック課長のトッド・シュナイダー氏共著の近く刊行される「日本の高齢化・人口減少のための経済政策」に掲載される記事内容が紹介されました。

財務省が公表した2019年の我が国の国民負担率(国民所得に対する税負担と社会保険料負担の割合)は42.8%(半分近くが税金)でした。昨年10月1日に消費税が10%に引き上げられたばかりです。我々庶民が「もうやめてぇ🆘」と悲鳴を上げているところに、コロナショックが勃発してしまいました。

当記事では「消費税の段階的な引き上げ」を財政・社会保障安定化の最重要施策とするIMFの見解が記されています。なんと高齢化・人口減少・財政赤字に直面する日本が「シュリンクノミクス」(縮小経済学:Shrink Economicsの造語)の壮大な実験場になるとしています。 主な内容は次のとおりです。

 シュリンクノミクス(縮小経済学) 日本の教訓

日本は、高齢化と人口減少に係る政策的教訓を引き出すための世界の実験場だ

日本独特の人口構成、出生率、移民の歴史により、高齢化・人口減少の代表例となっている。高齢化と人口減少の影響は、経済・財政的パフォーマンスから都市の形や公共政策の優先事項(公的年金の長期的支払い能力、医療、長期の介護システムなど)に至るまで、あらゆるものに現れている。

労働力の消滅

高齢化や人口減少は、多くの退職者、労働力の減少、所得税を産み出す労働者の減少を意味し、社会保障制度への資金調達難につながる。高齢化に伴って、医療費、介護保険費、年金への公的支出が自然に増加する。しかし、現役の納税労働者が減少するシュリンクノミクスの文脈では、こうした公共支出の増加をファイナンスすることは問題となる可能性がある。

団塊世代の全人口がわずか3年(2022年から2025年まで)で75歳の節目を突破し、GDP(国内総生産)に占める日本の公的債務は、すでに世界一であることを考えると、日本の課題は特に深刻だ。

持続可能な財政的地位と世代間の平等を維持しながら社会保障関連の義務を果たすことは、日本政府にとって厄介な問題であり、給付額と財政構造の両面で抜本的変更が必要になる可能性が高い。

日本に関するIMFの研究は、可能な政策オプションを探ってきた。 金融に関する選択肢のうち「消費税を継続的かつ段階的に調整すること」は、高齢化に伴うコスト負担を賄うための、財政健全化の先送り(債務返済期間の長期化)や健康保険料の自己負担割合の引上げ等、他の潜在的対策より重要だ。

これらの選択肢と比較すると消費税の引上げは、あらゆる年齢層に適用されるが、長期的なGDPの推移や福祉への悪影響を小さくする。

IMFの調査(McGrattan、Miyachi、およびPeralta-Alva 2018)によれば、金融債務の先送りにより、民間部門投資が最大8%も膨れ上がり、長期的なGDPや福祉に悪影響が及ぼすことが示唆されている。

また、高齢者健康保険に関して自己負担額の均一的な漸増は、高齢化コストの一部を現役世代に肩代わりさせることを意味し、逆行的な結果をもたらすことになる。

人口動態も世代間所得の不平等を悪化させる可能性がある。日本では人口の少ない若い世代が社会保障移転の増大に伴う資金調達コストを負担するように求められるため、高齢者と若者の所得格差拡大が懸念事項だ。

税金と移転による財政再分配の恩恵を最も受けている高齢者は、若い世代よりもはるかに裕福であり、貧富の差は高齢者世代では大幅に減少する。さらに、高齢者世代と若者世代の貧富格差は、米国よりも低いがドイツとイタリアに比べると日本の高齢者世代の富裕比率が高い。これは世代間の著しい富の不平等を示している。

日本の高齢者の相対的な富は、主に年金を介して高齢者の所得を補填することによる。その財政再分配メカニズムに疑問を投げかけているのだ。公的社会保障の枠組みおよび他の側面は、東京の政策会合でも活発に議論されている。

金融政策の有効性

シュリンクノミクスが金融政策にもたらすジレンマと密接に関連しているのは、高齢化と人口減少が金融セクターにどのように影響するか、特にこれらの力が銀行の金融仲介機能に与える影響だ。

人口動態の傾向は貯蓄と投資行動に影響を与えるため、貸出可能な資金の需要と供給に重要な影響を及ぼす可能性がある。日本の人口動態は、日本のすべての金融機関、特に地域金融機関にとって課題である。

日本の地方銀行は、地元の預金・融資に依存しているため、地方の環境変化に敏感だ。地方銀行を中心に、県内の人口減少や高齢化が最大の課題となっている。 しかし、都市部でさえ高齢化と人口減少を一層劇的に経験し始めるだろう。

さらに重要なことは、過去に年齢分布の変化と人口増加がある程度互いに相殺しあったが、これは今後10年間に転換し、潜在的な「人口統計の崖」を作ることになるだろう。

日本の地方銀行が代替的な資金源や資金活用の用途を見つけない限り、人口減少は必然的にバランスシートの縮小と貸出金比率の低下につながる。その結果、すでに低水準の収益性に下方圧力がかかり続けることになる。そのため、地方銀行は証券化・手数料化を進展する傾向を加速させていくであろう。

(imf.org) https://www.imf.org/external/pubs/ft/fandd/2020/03/shrinkanomics-policy-lessons-from-japan-on-population-aging-schneider.htm

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